イカロスの墜落のある風景をご紹介

みなさんこんにちは。

阿加井秀樹です。

今回ご紹介する作品はイカロスの墜落のある風景という作品です。

巨匠ピーテル・ブリューゲル初期の代表的な作品であるイカロスの墜落のある風景は、古典神話を題材とした現存する画家唯一の作品としても知られる作品となっております。本作に描かれるのは、オウィディウスの転身物語より、クレタ島の王ミノスに仕えた伝説的な名工ダイダロスが、自身の裏切りによってミノス王に捕らえられている息子イカロスの救出を目論み、息子イカロスに蝋と羽で拵えた翼を与え空から脱出を試みるも、脱出途中で興奮した息子イカロスが空高く舞い上がったために太陽の熱で蝋が溶け、海へと墜落して死してしまうイカロスの墜落の場面で、イタリアでの修行からの帰国直後頃に描かれたと考えられております。本作で墜落するイカロスの扱いは非常に小さく、画面右部の帆船の下に下半身だけが描かれ、画面の大部分は農耕に従事する民の姿とブリューゲル初期様式の特徴である高位置の視点による風景描写によって占められていることや、構成はほぼ忠実に転身物語の記述に従い描かれています。しかしながら、水平線に近い低い位置に描かれる太陽には相違が認められます。また一部からは、老農民の姿に人が死しても、鋤は休まぬというネーデルランド地方に伝わる諺の解釈が指摘されております。イカロスとダイダロスの話は有名ですが、違った角度から観賞できる本作は当日の背景や、ブリューゲルの印象をくみ取れる作品となっております。現在は、ブリュッセルのヴァン・ブレン美術館にございますので、機会があれば観賞することをお勧めします。

それではまた。

阿加井秀樹